解決事例
【解決事例】卸売・小売業を営む法人が業績不振により法人破産を選択し、代表者個人の破産も認められた事例
相談前の状況
Xさん(仮名・・法人代表取締役)は、卸売・小売業を営んでいました。当時は景気の波に乗って一定の売上を確保できる見込みがあったため、店舗の拡大や新商品の仕入れを図り、運転資金として金融機関から融資を受けながら事業を継続していました。
しかしながら、製品の需要は減少の一途をたどり、さらに仕入れコストの高騰やファッション市場の変化などが重なって、次第に業績は悪化していきます。売上に見合う利益を得ることができず、返済を続けるだけの資金を回せない苦しい状況に陥りました。
その後も大型融資によって仕入れを増やし、事業を拡大する戦略を取ろうとしたものの、思うように売上が伸びず、在庫を抱えたまま苦しい返済を強いられることになったのです。
このままでは返済が滞り、金融機関から一括返済を迫られる恐れもあったため、Xさんは弁済方法の変更(リスケジュール)を繰り返して月々の返済額を少なくするよう調整し、何とか会社を倒産させずに維持してきました。しかし、返済負担が軽くなっても肝心の売上が伸びなければ根本的な解決にはならず、借金の総額は減るどころか、利息部分で経営をさらに圧迫していきます。
一方で、市場は依然として厳しく、Xさんの会社が利益を上げて法人債務を返済できる見通しも立たないままでした。元々、利益率の高い商品を扱っていたわけではなく、製品を取り巻く時代の潮流も変わり、展示会等のイベントを行っても売上につながりにくい状態に陥っていたのです。さらに、借入総額が大きいため、いくら返済を続けても元金が減らず、月々の返済負担も厳しいままでした。
令和3年以降、コロナ禍の影響もあり、業界全般がさらに厳しい局面に直面しました。Xさんの会社でも売上は激減し、これ以上会社を維持することは困難であると判断せざるを得なくなりました。法人としても後継者は見つからず、Xさん自身も事故の後遺症による体調不安を抱えており、通常の業務をこなすのもやっとの状態。こうした状況下で、Xさんは「法人破産」を行って事業を整理し、同時に代表者個人としても破産手続きをすることが最善だろうと考えるようになりました。
相談後の対応
事業を継続する道が絶たれ、膨大な債務を抱えたまま途方に暮れていたXさんは、インターネットで「法人破産 代表者 同時破産」「事業再生 債務整理」などのキーワードを検索し、当事務所のホームページに行き着きました。電話で相談予約をしたうえで来所いただき、弁護士にこれまでの借入れの経緯や離婚・同居の状況、事故のことなど、詳しい事情をお話しいただきました。
当事務所の弁護士は、まず法人破産の要件および手続きを整理しました。法人の場合、債務超過の状態で事業継続ができず、弁済も見通せないのであれば、破産手続開始決定の要件(支払不能等)を満たす可能性が高いと判断します。Xさんの会社はもはや返済能力がなく、債権者も複数の金融機関にわたっており、全体の債務総額が大きいことから法人破産の申立ては妥当であると考えられました。
また、代表者個人においても、会社の連帯保証人となっていた分の借入や、個人的に抱えているクレジットカードのリボ払いなどの債務があり、さらに過去に家族の生活費や事業補填のために借入れをしていた経緯が判明しました。Xさんの収入は事故の後遺症の影響もあって不安定であり、到底返済していくことはできません。そこで、法人破産だけでなく、代表者個人としても破産手続きを申立てることを視野に入れて方針を固めました。
具体的な準備
- 債権者リストの作成
Xさんと一緒に、法人名義・個人名義問わず、これまで借入れをした金融機関やカード会社、その他の取引先などを洗い出し、正確な債権額を確認しました。件数や金額が多岐にわたっていたため、弁護士や事務スタッフが協力しながら書類を整理し、漏れがないよう注意してリストを作成しました。 - 資産状況の確認
法人名義の在庫や備品、機械類、あるいは代表者個人の資産として残っているものがあるかを確認し、破産手続においては管財人に引き継がれる可能性があるため、詳しくリストアップしました。売却すれば返済に充てられるものがあれば、その評価額を算定する必要がありましたが、毛皮の在庫の多くは時流に乗り遅れており、資産価値が低い状況でした。 - 破産の申立書類の作成
破産手続開始申立ての際には、法人・個人それぞれについて裁判所に提出すべき書類があり、会社の決算報告書や納税証明書、通帳のコピーなど、多岐にわたります。特に法人の場合は過去数年分の会計書類や在庫管理表、事業内容を示す契約書などが必要になり、提出資料は膨大になります。Xさんが事故の後遺症などで書類整理が難しい部分については、当事務所の事務スタッフがサポートしながら進めました。
これらの手続きを丁寧に行った結果、裁判所から法人破産手続開始決定が無事に下り、その後、管財人の選任を経て破産手続が進行していきました。代表者個人についても、連帯保証分を含めた多額の債務を返済する見込みがないことが認められ、個人の破産手続の開始決定および免責許可を得ることができました。
担当弁護士からのコメント
本事例のように、法人が抱える債務が大きく、さらに代表者個人も連帯保証などで同様に大きな負債を抱えている場合、法人破産と個人破産を同時に行うことで、法的に整理する道が開かれます。「破産」という言葉に抵抗を感じる方も多いと思いますが、事実上返済不可能な状況であれば、早めに破産手続に踏み切ることが結果として負担の軽減につながり、今後の生活や再出発への第一歩となる場合も多いのです。
Xさんの場合、長年製品を扱う事業を継続しようと努力されましたが、社会的な需要の変化、競合の増加などの環境変化に対応しきれず、経営状況は好転しませんでした。さらに、金融機関からの追加融資で一時的な資金を得ても、根本的な売上改善がなければ結局は借金を増やすことにしかならず、社内システムの大幅変更にもかかわらず軌道に乗せることができなかったのです。
また、個人の破産を検討する際、よくある誤解として「離婚していると、元配偶者に請求がいくのではないか」「一緒に住んでいると迷惑がかかるのではないか」という不安があります。しかし、基本的には破産手続は申立人本人の財産状況や収支を整理するものであり、元配偶者が連帯保証人になっていない限り、直接的に返済責任が及ぶわけではありません。ただし、名義が混在している資産や売却済の不動産、同居の実態など、事情を詳しく確認する必要がありますので、法律の専門家に相談していただくことをおすすめします。
法人破産の場合は管財事件となり、裁判所が選任した破産管財人が法人の資産を管理・換価して債権者へ配当する手続きを進めます。個人破産においても、一定額以上の財産を持っている場合は管財事件として同様の手続になります。書類の不備や説明不足があると、管財人から追加説明を求められたり、免責(借金の支払い義務を免除する判断)に不利な事情があると判断されたりするリスクがありますので、できる限り早期に弁護士へ相談し、正確な情報をまとめることが大切です。
破産手続において「免責不許可事由(借金の免除が認められなくなる可能性がある事由)」があるかどうかも大きなポイントです。例えば、浪費やギャンブルによって過大な借金を作った場合、資産隠しを行った場合などは免責が認められない可能性があります。しかし、本事例のように、真剣に事業再建を図った結果としてやむを得ず生じた債務や、時代の流れ・市場の変化によって売上が低迷した場合であれば、破産申立書類をきちんと整備することで免責が認められるケースが多いです。
Xさんは事故による後遺症も抱え、十分に働くことが難しい状態でした。今後の生活を考えても、返済を続けることは不可能であるため、法人破産と個人破産の同時申立てを選択したのは正しい判断だったといえます。免責許可が下りたことで、Xさんは今後の生活再建に専念できるようになりました。破産という決断はつらいものですが、これを機に一からやり直す気持ちで新しい仕事に取り組み、体調とも向き合いながら新たな一歩を踏み出されています。
借金や事業の継続に関して悩みを抱えている場合は、ひとりで問題を抱え込むのではなく、早めに弁護士へ相談することで解決の糸口を見つけやすくなります。弁護士は破産だけでなく、任意整理や民事再生など様々な解決方法を検討したうえで、依頼者の状況に最適な道を選択するお手伝いをいたします。特に、法人の場合は「もう少し早く相談してもらえれば、破産まで至らずに事業の一部を再生できた可能性があった」という事例も少なくありません。
本事例では、結果として法人破産と個人破産の手続きを選択しましたが、それぞれの事情によって最適解は異なります。まずは現状を整理し、債権者との関係や将来の見通しを総合的に検討することが不可欠です。どうぞお気軽に専門家へご相談ください。
※ 本解決事例はプライバシー保護の観点から内容を一部脚色・変更しており、実際の事案と異なる部分があります。本記事に記載の金額や経緯はあくまで一例であり、実際の法的手続や結果は事案により大きく変動します。詳しくは弁護士への個別相談でご確認ください。
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